アルテミスの食事へのこだわり 〜減塩について〜

 こんにちは。管理栄養士の横道友理子です。
 夕方になると心地よい風が木々を揺らし、過ごしやすい季節となりました。空もすっかり秋模様ですね。
 
        〈屋上庭園より撮影〉

       
 さて、おいしいブログでもそろそろ秋の味覚についてご紹介したいところですが、今回は皆様にお伝えしたいことがあり、いつもとはちょっと違う視点でお話します。それは、”減塩の大切さ”についてです。
 
 コンビニやファーストフード店など、外食産業が多くなった今、便利で良いとは裏腹に、添加物や塩分が多いという難点があります。忙しいと、どうしても頼りがちになりますが、この味になれてしまうと濃い味付けが習慣付いてしまい、塩分の過剰摂取を起こしやすいです。塩分を摂り過ぎると、血液中の塩分濃度が上がらないよう、水分で薄めようとします。すると、体内の水分が多くなり、血液量も増えることで血圧が上がってしまいます。また、濃い味付けは食欲を増進させて肥満を招きやすいです。「白ご飯のみでは食べにくいけど、混ぜご飯ならどんどん食べられる。」という方、いらっしゃいますよね。塩分が多い食事は、糖質も多くなる傾向にあります。
 また、妊産婦の方は体内の水分や血液量が増すことで、血圧が上がりやすいです。妊娠高血圧症候群になってしまうと、胎盤の機能が低下して赤ちゃんへの栄養が不足してしまうので、この時期は特に気をつけなければなりません。

 アルテミスのお食事は、1日の塩分を10g未満にしています。病院食というと、味が薄くて地味という印象をお持ちの方がいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。素材の味を生かし、余分な塩分を加えなくても美味しく感じられるよう工夫を凝らしています。
 
 では、どうすれば美味しく減塩できるのでしょうか?
 
 それは、天然出汁を使うこと。毎日昆布とかつお節で出汁をとり、汁物はもちろん、煮物やお浸しなど様々な料理に使用します。かつお節はイノシン酸、昆布はグルタミン酸という旨味成分を持ち、これら二つが合わさることで美味しさが倍増するのです。因みに市販の粉末出汁は、塩やアミノ酸などの添加物が含まれるものがほとんどなので、知らず知らずのうちに塩分が過剰になっていることがあります。時間がないとつい使いたくなりますが、体のことを考えると、極力避けたほうが良いですね。

 こちらは、厨房で出汁をとっている様子です。前日に昆布をつけておき、翌朝たっぷりのかつお節を入れてひと煮立ちさせます。写真で見るとわかりにくいですが、直径1メートルほどの大きな寸胴鍋を使い、毎日丁寧に作っているのです。


 入院中の患者様にお食事の感想を伺うと、「入院当初は味が薄いと感じたけど、慣れてくると普通になりました。」「ここで食べて、自分の味付けがいかに濃かったか気づかされました。」などのお声を頂きます。こうして実際に召し上がっていただくことで、今までの食生活を見直すきっかけとなり、さらに退院後の食事の参考にもなっていただければと思います。

 ご家庭での出汁の取り方をご紹介します。
〈材料〉
昆布    8g
かつお節 16g
水   800ml


〈準備〉
1.昆布は、固くしぼった布巾などでさっと拭く。(表面の白い粉は旨み成分なので、水洗いはしない。)
2.水800mlを鍋にいれ、昆布を漬けておく。(前日に行うほうが望ましいですが、当日でもOKです。その場合、3時間前には入れておくと良いでしょう。)

〈作り方〉
1.鍋に火をかけ、昆布の周りがぷつぷつ泡が出てきたら火を止め、昆布を取り出す。(沸騰してまうと、昆布の粘りが出てしまうので沸騰直前に取り出します。)
2.かつお節を鍋全体に入れ、1分間ほど煮立たせる。
3.火を止め、かつお節が下に沈むのを待つ。
4.万能こしきにクッキングペーパーを敷き、かつお節をこす。(かつお節をを箸でぎゅーっと押してしまうと、渋みが出てしまうので軽くこす程度にします。)

 一度にたくさん作って、冷蔵又は冷凍するのもおすすめです。ただ、保存期間が長くなるにつれて匂いや旨味が減少するので、冷蔵の場合は2日程度、冷凍なら3週間を目安に使い切ったほうが良いですね。離乳食からでも安心してお使いいただけますので、お時間ある時などぜひやってみてくださいね。